絵本塾カレッジ

 絵本塾カレッジ主催「第2回創作絵本コンクール」に多数のご応募をいただきありがとうございました。

 去る8月31日に神保町・ブックハウスカフェにおいて、審査委員総員6名が出席して最終審査会を開催しました。厳正な審査の結果、以下の4作品を授賞作品に選出しました。

・[大 賞]  『アリペン』  藤田 あお 文/延近 萌 絵

・[優秀賞]  『いもむし イモコ そらをとぶ』  石塚 直子 作/絵

・[佳 作]  『じゅうえん、あったら』  長谷 祏子 作/絵

・[佳 作]  『たんぼのピイちゃん』  つきくさ 作/絵

【講 評】
 最終審査に先行して8月24日から31日正午まで、東京神田のブックハウスカフェを会場に第一次審査を兼ねて作品展示会を催しました。
 審査委員は当該期間に、作品の全体性・主題・題材・絵画・テキストの5項目にわたる評価視点から審査を行い、各委員の推薦する上位5位までの作品を第一次審査通過作品として、総計15作品(複数選出あり)選出しました。
 一次通過作品の造本は、ていねいな手製本による彩色ダミー仕様で、応募者の創作意欲を感じとれる作品として応募されていました。
 最終審査は上記15作品を対象に審査委員総員出席の合評審査による選考方法を執りました。結果は、上記に記した4作品を授賞作品に推挙することとなりました。

 大賞作品の『アリペン』は、一次審査で審査員6人中5人が上位におき、うち4名が1位に推した作品で大賞受賞に格段の異論なく選定されました。テキストを藤田あおさん、イラストを延近萌(めばえ)さんが分担した共作絵本です。
 おおぜいのアリがペンのインクがわりで、そんなペンの取り扱い説明書を絵本で…という奇抜で意表をつくアイデアが物語を飛躍させる面白い作品です。シンプルで明快なテキストに呼応するようになじむイラストの軽快な描出も目をひきました。共作者二人の気脈通じた作品づくりがうかがえる作品でした。

 優秀賞作品の選考は作品評価が相応に分かれ、合評を展開するなかで、『いもむしイモコそらをとぶ』、『かんたのあまごい』、『じゅうえんあったら』、『たんぼのピイちゃん』にしぼりこまれました。

 優秀賞には、一次審査で広く支持された石塚直子さんの『いもむしイモコそらをとぶ』が選定されました。
 いもむしのイモコさんとテントウムシのナナヲの交流をやさしく描く、ほのぼのとしたお話です。イラストもやわらかい曲線を多用してかわいらしさを描き上げています。テキストにはまだ課題を残しますが、幼児が親しみやすい作品です。

 佳作となりましたが、もっとも論議を呼んだのが長谷祏子さんの『じゅうえんあったら』でした。どこにでもある団地の商店街。そこで起きるある日のちいさな姉と弟のちいさな冒険の物語です。
 冒険とは”ぬすみ”のことです。遊具の魅力にかられて”悪い冒険”をしたことで、姉と弟は、背中をひかれるような怖い思いをし、深い後悔におそわれます……。胸をしめつけられるような苦しい思いを、ふつうに流れる日常の情景のなかに落とし込んだ作品です。

 佳作にはもう1点。つきくささんの『たんぼのピイちゃん』を選定しました。稲作で田の虫や雑草除去に活躍するアイガモとおじいさん。そして主人公さきちゃんとのあたたかな交流を描くおはなしです。
 永い時間を費やして創作にたどりついたという作品は、アイガモ農家取材や資料調べなどの足跡をさりげなく残しています。さきちゃんが名づけたヒナのピイちゃんも、すくすく育って草取り虫取りの役割を果たします。しかし、役割を終えると工場へ送られて食肉になるという現実を、さきちゃんは知らされます。
 いのちの限界と大切さを裏面に描き込みながら、祖父と孫娘、そしてアイガモとの交流をていねいに語る好作品です。

 選にはもれましたが、竹島亜紀子さんの『かんたのあまごい』は、キャリアを感じさせる構成と物語づくり、テキストにふさわしい安定感のある絵づくりが好評でした。昔話という類書の多い分野の作品のむずかしさが評価を分けました。

「絵本塾カレッジ第2回創作絵本コンクール」は2回目を終えて、応募作品は若干減数となりましたが、作品完成度が高くなってきました。
 作者の興味にまかせるだけでなく、体験や経験に裏打ちされた主題を明快な題材選択で描き出す試みがたくさんの作品にみられたのは収穫でした。普遍的なことわりを、絵本という独特な本にどのように描き語るか、よろこび・かなしみ・たのしさ・おもしろさをどう表現できるか、同時代に生きる児童とともに在りながら想像し、創造してくださるコンクール応募者の出現を今後も期待してゆきます。

 最後に、今回のコンクール開催にあたり応募くださった方々、作品審査にあたりご協力頂いた関係各位のみなさまに厚く御礼申し上げる次第です。

 2019年9月10日
 審査委員長 飫肥 糺

 

メニューを閉じる